執筆者:後藤ようこ
企業の防災対策かならず来る南海トラフ地震に、企業はいま何を備えるべきか 〜企業のホームページを情報発信の核にする〜
- 2026年01月08日
- コラム
執筆者:後藤ようこ
後藤 ようこ取締役副社長
スキル
- ランディング(執筆)
- ディレクション
- コンサルティング
大学病院で看護師として働いたのち、看護教員の資格を取得し看護教育に携わりました。
現在は株式会社ノーブランドの取締役としてウェブサイトやパンフレット制作のディレクションを担当しています。(ディレクションは20年以上の経験を持ちます。)
また、医療系の出版社で医療記事の連載をした経験があります。医療記事をはじめ、販促物に掲載する原稿作成(ライティング)も担当しています。医療知識を持っているため、医療、介護、福祉関係のお客様が多いです
これまで学んできた、教育学、人間関係論、心理学などの知識を活かし、販売促進に関わるコンサルティングも行っています。



<記事の概要>
南海トラフ地震は「いつか」ではなく「起きる前提」で備えるべき災害。従業員の安全確保を最優先に、連絡ルールと公式サイトでの情報発信体制を平時から整えることが重要。必要なポイントを解説しました。目 次
1「いつか」ではなく「前提」として考える 巨大地震への備え
振り返ってみると、この30年のあいだには、さまざまな出来事がありました。
ビジネス環境の変化はもちろんですが、特に強く印象に残っているのが、2011年の東日本大震災、そして2020年から始まった感染症流行による社会的な混乱です。
いずれも、自分たちの努力だけではどうにもならない出来事が、日常のビジネスに大きな影響を与えました。
そうした経験を通じて感じるのは、非常時にこそ、日頃の備えや企業としての基礎体力が問われるということです。
何が起きても揺るがない、ということは難しくても、どれだけ落ち着いて対応できるかは、平時の準備に左右されます。
今回のブログでは、今後発生が予測されている巨大地震――南海トラフ地震をひとつの前提として、
企業として、あらかじめ考えておきたい備えについて、忘備録も兼ねて整理してみたいと思います。
2南海トラフ地震についてのエビデンス整理
まずは、南海トラフ地震について、現在公表されている主なエビデンスを整理しておきます。
政府の地震調査機関による長期評価では、今後30年以内の発生確率について「60〜90%程度以上」と示されています。
この数値は、
といった複数の手法を組み合わせて算出されたもので、専門会議の見解として公表されています。
(文部科学省 研究開発局 地震火山防災研究課)
「南海トラフの地震活動の長期評価」を一部改訂しました
歴史的な発生周期について
南海トラフ地震は、歴史的にもおおむね100〜150年周期で巨大地震が繰り返し発生してきたとされています。過去約1,400年の記録を振り返ると、複数回の大規模地震が確認されており、現在は、その発生間隔の範囲内に入っていると考えられています。
地球環境・自然災害に関する予測
第2節 地球環境・自然災害に関する予測
「予知」ではない、という前提
一方で、地震の時期・規模・場所を高精度で予測する確立した方法は、現時点では存在していません。
この点については、気象庁も明確に示しています。
つまり、
「いつ起きるかを言い当てること」はできないものの、
科学的な評価として“発生する可能性が高い”ことは示されている。
――この前提に立って防災を考える必要があります。
「南海トラフ地震臨時情報」について
気象庁や防災機関では、プレートの動きや地震活動を日常的に観測しています。
その中で発表される「南海トラフ地震臨時情報」は以下のように位置づけられています。
⇣サイトより引用
「南海トラフ地震臨時情報」は、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合や、地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価された場合等に気象庁から発表されます。南海トラフ地震の想定震源域内でM6.8以上の地震等の異常な現象を観測すると、まず、「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表されます。
その後、専門家等による臨時の「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」が速やかに開催され、その調査結果を受けて、該当するキーワードを付した臨時情報(「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」のいずれか)が発表されます。令和6年8月8日の日向灘を震源とする地震を受けて発表されたのは「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」でした。
南海トラフ地震臨時情報が発表されると、テレビやラジオ、インターネット等のほか、防災行政無線や広報車等を使った情報の伝達が行われます。また、政府や自治体からは、発表されたキーワードに応じた防災対応が呼びかけられます。
第2節 地球環境・自然災害に関する予測
これらのエビデンスから言えるのは、
だからこそ、
「起きてから考える」のではなく、
起きる前提で、企業として何を備えておくかが重要になってきます。
3第1章|南海トラフ地震の本当の影響は「長く続くこと」
南海トラフ地震を考える際、よく比較されるのが、2011年に発生した東日本大震災です。
東日本大震災では、日本列島の東側、太平洋沖を震源とする地震により、東北地方を中心に甚大な被害が発生しました。
一方で、これから起こると想定されている南海トラフ地震は、西日本の沿岸部を中心に、より広い範囲で被害が発生する可能性があるとされています。特に、静岡県から宮崎県にかけての太平洋沿岸地域では、強い揺れや津波の被害が想定されており、このエリアは人口や産業が集中していることから、経済的な影響は東日本大震災を大きく上回る可能性があるとも指摘されています。
「長く影響が続く地震」という特徴
南海トラフ地震では、次のような状況が想定されています。
これらを踏まえると、問題となるのは地震そのものの被害だけではありません。
「仕事や生活が止まりやすい」ことの影響
南海トラフ地震は、仕事や生活が止まりやすい地震であるという点が、大きな特徴です。
西日本の広いエリアで被害が発生すれば、その影響は被災地だけにとどまらず、日本列島全体の物流や供給網にも波及します。
結果として、
といった状況が、全国的に発生する可能性があります。
さらに、こうした影響は短期間で収束するとは限らず、一定の期間、続くことが想定されています。
だからこそ、企業の備えが問われる
南海トラフ地震は、
「大きな揺れ」だけでなく、
その後に続く社会や経済への影響まで含めて考える必要がある地震です。
次章では、こうした前提を踏まえたうえで、地震発生後、企業の現場で実際に何が起きるのかについて整理していきます。
4第2章|地震が起きた直後、会社では何が起きるか
2011年の東日本大震災では、私は鎌倉から横浜へ向かう電車の中で被災しました。
地震直後、JR線は全線で運転を停止し、道路は大渋滞。バスもほとんど機能しませんでした。
結果として、発災直後の14時過ぎから、長時間歩き続けて自宅に戻ることになりました。
当時を振り返ると、「移動できない」という状況が、想像以上に日常を奪うものだったと感じます。
巨大地震が起きると、交通網はほぼ止まる
巨大地震が発生すると、交通インフラはほとんど機能しなくなります。
地震が発生した時間帯によっては、出社できない(または、帰宅できない)社員が多数出るという状況は、十分に想定されます。
「連絡が取れない」という問題
交通だけでなく、通信も大きな課題になります。
東日本大震災の際には、携帯電話はほとんどつながらず、公衆電話の前には長い列ができていました。
ネットインフラが混乱すると、
といった事態が起こります。
事前に決めておくべき「連絡と行動のルール」
こうした状況を踏まえると、巨大地震への備えとして、通信が不安定な場合の連絡手段や行動ルールを、あらかじめ社内で共有しておくことが重要です。
たとえば、次のような点を整理しておく必要があります。
メール、LINE、公衆電話など、複数の選択肢を想定する
震度〇以上の場合は、どの方法で連絡を取るか
誰に、どこへ、被害状況を報告するのか
また、地震が夕方以降に発生した場合、帰宅困難者が生じる可能性も高くなります。
その場合、
といった点についても、最低限の方針を決めておくことが望まれます。
完璧な準備である必要はありません。
「いざというときに、どう動くかを事前に考えているかどうか」が、非常時の混乱を大きく左右します。
5第3章|災害時、会社が守るべき優先順位
南海トラフのような巨大地震が発生した際、企業としてもっとも大切なのは、対応の順番を間違えないことです。
すべてを同時に守ることはできません。
だからこそ、優先度の高いものから順に対応していく必要があります。
一般的に、企業が優先すべき順番は次の通りです。
南海トラフ地震では、約6,000万人以上に影響が及ぶ可能性があるとも言われています。
ただし、被害の大きさや状況は地域によって大きく異なります。
こうした中で、企業として絶対に誤ってはいけないのが、何よりも先に、従業員の安全確保を最優先することです。
オフィス内の被害状況はもちろんのこと、外勤中のスタッフが被災していないか?休暇中や在宅中のスタッフが安全か?といった点も含めて、安否確認を行う必要があります。
「勤務外の従業員」の安否確認は意外に難しい
勤務時間中であれば、従業員の所在や状況を把握しやすい一方で、オフの日や勤務時間外の従業員の安否確認は、想像以上に難しいものです。
そのため、いざというときに備えて勤務時間外でも最低限連絡が取れる手段や安否確認の方法やルールを、あらかじめ整理しておくことが重要になります。
ただしその際は労働時間外の拘束や、過度な時間外連絡にならないよう、十分な配慮が必要です。
(安易に上司と部下がプライベートでつながることはセンシティブに扱う必要があります)
防災対策と労務管理のバランスを取りながら、無理のない形で準備しておくことが求められます。
従業員の安全が確認できてはじめて、次の段階として、どの業務を続けるのか?どの業務を一時停止するのか?といった、事業継続の判断に進むことができます。
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6第4章|防災対策として、もう一つ大切な「情報発信の備え」
南海トラフをはじめとする巨大地震への備えというと、備蓄、避難訓練、BCP(事業継続計画)といった対策が、どうしても注目されがちです。
もちろん、これらはいずれも重要です。
しかし、もう一つ忘れてはならないのが、「情報発信の備え」です。
いざというとき、外から見えているのは「情報」だけです。
災害が発生した直後、社内の状況は把握できていても、社外の人には、会社の状況はほとんど見えていません。外部からは、次のような疑問や不安が生じます。
被災地以外にいる取引先や顧客ほど、情報がないこと自体に不安を感じるものです。
情報が出ていないことが、不安を大きくする
「あの会社は、どれくらいの被害を受けているのだろうか」
「いま依頼している仕事は、このまま進めて大丈夫なのだろうか」
こうした不安は、情報が出ていない時間が長いほど、膨らんでいきます。
もちろん、大きな被害を受けている場合、すぐに情報発信どころではない状況もあります。
しかし、情報を出せる余力がある場合には、速やかに、最低限の情報を伝えることが重要になります。
完璧でなくていい。「最低限の公式情報」があるかどうか
災害時の情報発信に、完璧な文章や詳細な説明は必要ありません。
重要なのは、
といった、事業判断に必要な最低限の情報を、正確に・公式に伝えられるかどうかです。
この「公式に伝えられる場所」があるかどうかが、次の章で触れるテーマにつながっていきます。
7第5章|SNSがあるから大丈夫、ではない理由
そのとき、ほぼ唯一の情報収集手段だったのがTwitterでした。
線路の途中で止まったJR線の車内では、多くの人がスマートフォンを手に、タイムラインに流れてくる情報を追っていました。
東北の津波の映像が断片的に流れ、「被災地ではとんでもないことが起きているらしい」
——そんな空気だけが、車内に広がっていたのを覚えています。
ただ、その情報はどれも断片的で、何が事実で、何が誤情報なのかは判断できない状態でした。
とにかく早く自宅に戻り、落ち着いてニュースを確認したい。
そんな気持ちでいっぱいだったのを思い出します。
災害時、SNSは便利だが「万能」ではない
大きな災害時、情報収集・情報発信の手段として、SNSは非常に便利です。
スピードが速く、現地の状況がリアルタイムで共有される点は、大きな強みです。
一方で、SNSには次のような側面もあります。
つまりSNSは、情報の拡散には向いているが、公式情報の置き場所としては不安定だということです。
SNSは「拡散の手段」、公式情報の「拠点」ではない
企業にとって重要なのは、どこに公式情報を置くかです。
SNSは、情報を早く広く届けるという点では非常に有効ですが、会社としての正式な見解や状況をまとめた情報を整理して伝える場所としては、向いているとは言えません。
そのため、SNSはあくまで「拡散の手段」として活用し、公式情報は別の場所にまとめておくという考え方が重要になります。
それでもSNSは「重要な柱」の一つ
もちろん、SNSが不要という話ではありません。
スピード感という点では、SNSには大きな価値があります。
公式情報を出したことを知らせたり、状況が変わったことを即座に伝えるといった用途では、情報発信の柱の一つとして、十分に活用すべきツールです。
ただし、「SNSがあるから大丈夫」ではなく、「SNSと公式な情報発信の場を、どう使い分けるか」。
ーこの視点を持つことが、災害時には特に重要になります。
8第6章|いざというときに機能する「オフィシャルサイト」
やはり、南海トラフのような巨大地震時の情報発信としては、オフィシャルサイト(ホームページ)を中心として、企業の状況を発信することが大切だと思います。
オフィシャルサイトには
というメリットがあります。
2番目の「誰でも確認できる」という視点は、意外に重要で、SNSはアカウントがないと閲覧できない(しにくい)といったデメリットがあります。SNSを使わない人は、その操作方法さえも、よくわからない場合があるのです。
営業状況、対応方針、問い合わせ先などを「ここを見ればわかる」状態にできる。
これは平時には当たり前のことですが、非常時には大きな意味をもちます。
ネットインフラが不安定な時は、もちろん閲覧も困難になるかと思いますが、復旧したあとはやはりオフィシャルサイトを中心に企業の情報発信をしましょう。
そのためにも、平時にオフィシャルサイトのメンテナンスをしながら、整えておく必要があります。
9第7章|防災としてのWeb・情報発信の準備
これから発生すると想定されている巨大地震。
防災対策は、備えをすればするほど被害を小さくできると言われています。
企業にとっての防災活動は、何か特別なことを新しく始める必要があるわけではありません。
大切なのは、優先順位を考え、まずは最低限のことを整えておくことです。
情報発信という観点で言えば、確認しておきたいポイントは多くありません。
これだけ事前に準備しておくだけでも、企業としての防災対策としては十分に意味があります。
平時には目立たない準備ですが、非常時には大きな差になります。
10まとめ|何も起きないことが一番。でも
巨大地震。
何も起きないことが、もちろん一番です。
しかし、高い確率で発生すると予測されている南海トラフ地震は、「起きないことを前提に考える」ことが難しい災害だとも言われています。
被害想定は非常に大きいものですが、それでも、今この瞬間からの備えによって、影響を小さくすることは可能です。
企業としての備えの一つは、もしものときに、きちんと情報を出せる会社であること。
それは従業員、取引先、顧客からの信頼を守ることにつながります。
「Instagramがあるから、ホームページはいらない」ではなく、
いざというときのために、
公式に情報を出せる場所を用意しておくこと。
それもまた、
これからの時代に求められる、企業防災のひとつだと私たちは考えています。
当社では、スタッフ間の情報共有の仕組みづくりや、いざというときにも公式情報を発信できるオフィシャルサイトの構築など、情報発信の基盤づくりをサポートしています。
防災の観点からも、Webや情報発信について見直したいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。