

執筆者:後藤ようこ
AI活用「AIでデザインは終わる」って本気で思ってる?── 人間のデザイナーが消えない5つの理由
- 2025年06月02日
- コラム

執筆者:後藤ようこ
後藤 ようこ取締役副社長
スキル
- ランディング(執筆)
- ディレクション
- コンサルティング
大学病院で看護師として働いたのち、看護教員の資格を取得し看護教育に携わりました。
現在は株式会社ノーブランドの取締役としてウェブサイトやパンフレット制作のディレクションを担当しています。(ディレクションは20年以上の経験を持ちます。)
また、医療系の出版社で医療記事の連載をした経験があります。医療記事をはじめ、販促物に掲載する原稿作成(ライティング)も担当しています。医療知識を持っているため、医療、介護、福祉関係のお客様が多いです
これまで学んできた、教育学、人間関係論、心理学などの知識を活かし、販売促進に関わるコンサルティングも行っています。
<記事の概要>
AIが当たり前になった今、「デザイナーはもういらない?」そんな不安が広がる中で、人間のデザイナーにしかできない5つの価値をデザイン会社が本音で解説。AIを脅威ではなく“味方”に変える視点をまとめました目 次
1「AI時代、デザイナーは終わり?」――そんな声が聞こえてきます。
数時間かけていたレイアウト作業が、数分で終わりーー
キャッチコピーや画像も、AIがそれっぽく整えてくれます。
このようなAIの動きをみていると、人間のデザイナーは不要に感じてきます。
それでは本当に、“人間のデザイナー”の役割はなくなっていくのでしょうか?
答えは『NO』です。
むしろ、私たちがデザイン会社として日々感じているのは――
「人間のデザイナーだからこそ必要とされる場面」が、確実に増えているという実感です。
本コラムでは、人間のデザイナーだからこそできる5つのことについて、私達が感じていることをまとめています。同業者含め、DesignとAIについて興味のある方は、ぜひ、参考にしてください。
2AIではできない。人間のデザイナーだからこそできる5つのこと
「ゼロからイチ」を生み出す創造力
社会の空気感を読みながら、文化や感性を掛け合わせて、新しい世界観を打ち出す。
これは人間のデザイナーにしかできない「想像力」の領域です。”
AIは、既存のデータから学習し、パターンを分析して新しいデザインを生成する能力に長けています。
しかしそれは、あくまで「既知の再構成」であって、本当の意味での革新ではありません。
何もないところから、社会や文化に新しいインパクトを与えるようなアイデアを生み出す――
この「ゼロからイチ」の創造こそ、人間のデザイナーにしかできない領域です。
たとえば新しいプロダクトにふさわしいロゴの方向性や、時代の空気を読んだビジュアルトーンの提案など。こうした、まだ誰も見たことがないデザインは、人間の直感や文化的文脈から生まれます。
AIはこうした人間の創造性を後追いし、学習することはできても、自ら先頭を切って進化を牽引することはできません。
感情や共感を汲み取る力
子ども向け教材や医療機関の案内など、相手の立場に立って「どう伝えるか」を考える必要があります。
「泣ける」「癒される」「励まされる」――
そんな細やかな感情の機微をすくい取って、表現に落とし込めるのは、やはり人の感性です。”
デザインは単なる視覚表現だけではなく、人の心を動かすコミュニケーション手段です。
そこには、共感や感情、背景にあるストーリーへの理解が不可欠です。
例えば、子ども向けの教材や医療施設の案内、被災地支援のポスターなど、デザインには常に「人」が介在します。
人間のデザイナーは、その場にいる「誰か」に寄り添い、その人の気持ちを想像してデザインを組み立てることができます。
AIには「泣ける」「ホッとする」「背中を押される」といった情緒を汲み取る力はありません。ここに、感情知能(EQ)を持つ人間の価値があると私たちは考えます。
戦略的に導き、選び、磨き上げる力
“ターゲット、コンセプト、文脈……
それらを整理して、意味のある『ひとつ』に絞り込む編集力は、デザイナーの戦略眼の見せどころです。”
AIは、選択肢を「たくさん」出すことが得意です。
しかし、「最適な1つ」を選び取るのは人間の仕事です。
私たちデザイン会社は、クライアントの課題やターゲットの嗜好、プロジェクトの文脈などを踏まえて、AIが出力したアイデアを整理・編集して、意味あるストーリーにまとめ上げる力を持っています。
また、「どのAIツールを、どこで、どのように使うか」を判断するのもデザイナーの役割です。つまり、AIがツールである以上、それを活かすディレクターとしての能力もより重要になります。
倫理や社会性を意識した判断
見る人を傷つけないための「視点の更新」は、人間が“考えること”を止めないからこそ、できることです。”
AIが生成するデザインには、無意識の偏り(バイアス)や誤情報(ハルシネーション)が含まれていることがあります。特定の文化や性別、価値観に偏った表現が混ざっていても、AIはそれを判断できません。
ここに求められるのが、人間の倫理的な判断です。
たとえば広告に使われる人物の肌の色、ジェンダー表現、個人情報の扱い――これらに配慮した設計ができるのは、人間のデザイナーならでは。
「社会にとって望ましいデザインとは何か?」を考え、責任を持ってアウトプットを形にする。この姿勢は、AIだけを使っていては気づきにくい視点です。また、価値観は少しずつ変わっていくものです。日頃からニュースや他分野の常識などを積極的に学ぶことが大切です。
美しさと品質を見極める“目”
その違和感に気づけるのが、人間の「目」と「美意識」です。”
最後に、人間のデザイナーが持つ最大の武器―― “目”について。
AIは確かに膨大なバリエーションを生み出すことができますが、「どれがベストか」「完成度は十分か」といった判断には、熟練の目と経験が不可欠です。
たとえば、海外で見かける日本食レストランを想像してみてください。
一見すると和のテイストで世界観がつくられていても、私たち日本人から見ると「何かが違うなぁ〜」と感じることがあります。
その“違和感”を見抜き、微細なニュアンスを調整していく力こそ、文化的な背景や美意識を持った人間の感覚も重要なのです。
微妙な余白、フォントの太さ、写真のトーンや余韻……。
最終的な「美しさ」を決定づけるのは、機械ではなく人間の美意識です。これは学習ではなく、日々の観察と蓄積によってしか磨かれません。
3危機ではなく、進化のチャンスに変える
実際、私たちの制作会社もその波のなかにいます。
でも、ただ感情的に「AIは怖い」「奪われる」と拒否するだけでいいのでしょうか?
指をくわえて、その勢力に飲み込まれてしまっていいのでしょうか?
私たちには、選ぶ力と、進む力があります。
AIはツールです。
使い方次第で、私たちの仕事をもっとクリエイティブに、もっと意味のあるものに変えてくれます。
たとえば、AIを活用することで単純作業の時間を減らし、アイデアを練る時間や、学びに使える余白が生まれます。結果として、お客様への制作コストを抑えながら、より高品質な成果物を届けることが可能になるのです。
これらのツールを“道具”として使いこなし、AIと人間が手を取り合うデザインプロセスを構築しています。
4私たちが取り入れているAIツールの例
コンセプト整理、コピーライティング、企画ブレストなどに活用
大量の資料やヒアリング内容を整理し、要点を抽出
映像やプレゼン用の音楽制作に
イメージ画像生成や画像補正に
調査・企画立案・表現バリエーション探索に活用
イメージ動画作成
5これからも、価値あるデザインを届けるために
それよりも、「AIをどう使いこなし、人間の強みをどう活かすか」にワクワクしています。
人間の直感と、AIの処理力――
この両輪をうまく融合させれば、もっとおもしろいクリエイティブができる。
これからも私たちは、そんな未来を信じて、進化し続けていきます。
これからの時代、デザイナーに求められるのは「AI vs 人間」ではなく、「AI × 人間」という発想です。
技術に振り回されるのではなく、それを理解し、使いこなし、さらに人間らしい感性で補完する――そんな新しいクリエイティブ力が求められています。
未来のデザイナーは、ただ描くだけではなく、考える力・選ぶ力・感じる力を持つ戦略的な存在へと進化していくでしょう。
AIの進化は止まりません。
だからこそ私たちは、学ぶことを止めてはいけません。
「人間にしかできないこと」に誇りを持ちつつ、新しいツールやテクノロジーにも柔軟に向き合っていく。
その先に、今までにないデザイン会社の役割があると、私たちは信じています。
Midjourney(AI画像生成Service)でつくった画像