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後藤ようこ

執筆者:石川浩子

炎上リスクヘッジ説明できるデザインが組織を守る。日本代表キービジュアル騒動から考える炎上リスクマネジメント

  • 2025年11月20日
  • コラム

<記事の概要>

とあるデザインの炎上を起点に、意図より“連想”が先に立つ時代のリスクと、炎上を減らすチェック視点を整理。

1「日本サッカー協会(JFA)キービジュアル炎上」の経緯

先日、日本サッカー協会(JFA)が発表したサッカー日本代表の「キービジュアル」が、SNS上で大きな波紋を呼びました。

(詳しいニュースはこちら➡記事を読む

問題となったのは『サッカー日本代表「最高の景色を2026」アンバサダー』のキービジュアル。
その1枚の画像を巡り、アンバサダーに就任したグループの背景や、配色・構図が隣国の国旗を連想させるという指摘などが重なりSNSで大炎上することとなりました。

その後、またたくまに、日本サッカー協会(JFA)は公式サイトにて『サッカー日本代表「最高の景色を2026」アンバサダー』のキービジュアルの変更を発表。

短期間のうちにキービジュアル差し替えを余儀なくされました。

SNSで炎上する具体的な要素は、白・赤・青の色使いと幾何学的な線が、あたかも隣国の国旗を想起させる構成になっていた点でした。
ネット上では、「なぜ日本代表なのにこの配色なのか」と物議を醸すこととなったのです。

この一連の出来事は、デザインの“意図”よりも“受け取られ方”が先に動く時代を象徴する事例と言えるでしょう。

本ブログでは、この騒動をテーマに、中小企業が考えるべき販促物デザインにおける注意点についてまとめましたので、ぜひお読みください。

2「センスの問題」ではなく「受け取られ方」

この『サッカー日本代表』のキービジュアル炎上問題よりも前から、デザインに関する炎上騒動はたびたび起きています。

時に、デザイン関連の炎上においては、

  • デザインのレベルが低いのでは?
  • 前の方が良かった
  • イメージが良くない

などなど、一般消費者の主観に基づくコメントの批判が沸き起こることがあります。

そして、今回の日本代表キービジュアル炎上騒動は、本質的には “どのように受け取られたか” の問題だったと言えます。

当然ながら、制作側は「日本代表をいっぱい応援してもらいたい」という意図があったはずです。
しかし、見る人の一部は「隣国っぽい」「なぜこの国旗のイメージ?」と感じてしまいました。

誰かの発信を発端に、「そうだ、そうだ」と、その受け取り方がSNSで拡散し炎上するという形になっていきました。

つまり、デザインの良し悪しよりも、「どんな連想を起こしてしまったか」が結果を左右したと言えるでしょう。

ココがポイント!

炎上の火種は“作り手の意図”よりも“受け手の連想”で起こり、不特定多数の多くの意見が一同に集まり意見が交錯する傾向が多いです。

3どこが炎上ポイントだったのか?

まずは事実関係を、できるだけ感情を入れずに整理してみましょう。

▼大まかな流れ
1. 配色や構図が、隣国の国旗を想起させると指摘された
2. 「なぜ日本代表なのにその配色なのか?」という疑問や批判がSNSで広がった
3. その声を受けて、JFAが「意図的ではない」とするコメント表明やビジュアル変更など、対応に追われた

ここで重要なのは、
制作側が「隣国を意識して作った」かどうかは定かではないにもかかわらず、「そう見える」という声が拡散したことで、対応を迫られた。という点です。

なぜここまで問題になったのか?

  • 国旗・ナショナリズム・スポーツといった、感情を刺激しやすい要素が重なった
  • 「それをあえてやっているのか?」という疑念が生まれやすいテーマだった
  • 画像1枚が文脈抜きで一人歩きしやすい媒体だった

この組み合わせが、「意図と違う連想」が炎上につながる典型例になりました。

ココがポイント!

「意図していない連想」でも、特定のテーマ(国・政治・宗教など)に触れると、一気に炎上リスクが高まるのです。

4他人事ではない!「意図」より「連想」が先に立つ時代

ここまで読むと、
「いや、うちはそんなセンシティブなことは扱わないから大丈夫では?」
と思われるかもしれません。
しかし、日常的なビジネスでも、「意図しない連想」が問題になるケースは増えています。
よりリアルに想像しやすい4つのケースを紹介します。


①アーティスト衣装が“戦争イメージ”を想起させたケース


あるアーティストがステージで着ていた衣装が、

・キノコ雲を思わせるシルエットや柄
・軍隊の制服のような装飾

これらによって、特定の戦争や歴史的出来事を連想させるとして批判されたケースがあります。
制作側に政治的な意図があったかどうかは別として、「戦争をファッション化しているように見える」という受け取り方が広がってしまったわけです。

ここでのポイントは、
「メッセージを込めたつもりはない」では済まない点や、連想される歴史的・社会的イメージが強すぎると、それ自体が“メッセージ”になってしまう。ということです。


②「0円」と大きく書かれた広告が、実は高額サービスだったケース


美容サービスやサブスクサービスなどでよく問題になるのが、
「0円」「無料」だけが強く印象に残るデザインです。

・ビジュアルの中央に大きく「0円」と書かれている
・その下や端に、小さな文字で「※初回カウンセリングのみ」「※別途○○費用がかかります」等と表記
・実際には高額な契約を迫ったり、定期購入の回数縛りがあったりする

この場合、「補足説明もちゃんと入れたのに」と制作側は言いたくなりますが、
受け手からすると「0円と勘違いさせるような見せ方だ」と感じるわけです。

“何が書いてあるか”だけでなく、“どこに・どのサイズで・どう配置されているか” が信頼を左右すると考えてみるとわかりやすいでしょう。


③高級サービスに“完成度低いAI画像”を使ったケース


最近増えているのが、高額サービス × チープな生成AI画像 の組み合わせです。

・数十万円〜数百万円の高級サービスの広告なのに、人物写真の手や服が不自然
・不自然な影や歪んだ建物などが残ったままの画像を、そのままWebサイトに使用している

ここでは、画像そのものよりも、
「細部の違和感に気づいていない会社」
「目が行き届いていないのでは?」
という印象が問題になります。結果として、「この会社、本当にクオリティにこだわっているのだろうか?」という疑念を生んでしまいます。
高価格帯のサービスほど、ビジュアルの“緻密さ”が信頼の裏付けになることを意識しておきたいところです。


④災害直後の“炎・津波”モチーフが不適切と受け取られたケース


最後に、判断が難しいのが、「タイミングの問題」です。

・地震・水害・火災、センセーショナルな事件などのが起きた直後
・そんなタイミングで、炎・爆発・津波・崩壊を連想させるビジュアルを打ち出してしまう
・「この時期に、このビジュアルは不適切だ」と批判されてしまう

この場合、デザインそのものが悪いとは限りません。
平時なら問題にならない表現でも、「いまは避けるべき時期だった」というだけで炎上することがあります。
市民の深層心理に配慮して、広告を打ち出すのを延期したり、内容を見直す必要があります。

5気をつけたい「炎上しにくい」3つの視点

ここからは、実際にパンフレットやポスターを作るときに役立つ“3つの視点”を整理します。
難しい理論ではなく、「会議でそのまま使えるチェック観点」として読んでみてください。

国旗・宗教・政治を連想させるモチーフになっていないか?

まず押さえておきたいのは、「特定の国・宗教・政治」を連想させる組み合わせです。

  • 配色(特定の色の組み合わせ)
  • 図形の並び(十字、星、三日月など)
  • スローガンやコピーの言い回し

これらが偶然でも、ある国旗や政治運動と似てしまうことがあります。
もちろん、「一切使ってはいけない」という話ではありません。
ただ、

  • 海外向けの資料
  • 自治体・教育・医療など、公共性の高い領域
  • 国際イベントやスポーツ関連

といった文脈では、より慎重に見ておく必要があるでしょう。


SNSで“画像1枚だけ切り取られても”誤解を生まないか?

炎上の多くは、画像1枚が単独で広がるところから始まります。

  • 「0円」の表記だけが切り取られて画像化される
  • 誤解を招きやすい部分が、切り抜かれて拡散される
  • 補足説明がない状態で、人々が自由に解釈し始める

そこで有効なのが、制作の終盤に
「このデザインを、画像一枚だけで見たらどう感じるか?」
と、あえて“説明なしの状態”で眺めてみることです。

  • 第一印象で、何をしている会社だと感じるか
  • 誇張表現や比較表現が、過度に攻撃的に見えないか
  • 誰かを傷つけるような捉え方ができてしまわないか

を想像してみましょう。


社内に「ちょっと待って」と言えるチェック体制があるか?

どんなに優秀な担当者でも、自分の作ったものには盲点が生まれます。

制作担当者「これは大丈夫だろう」と思っていても、別部署の人が見ると「ちょっと危ないかも」と感じる。その“違和感”を拾えるかどうかが、炎上回避の分かれ道になります。

そのためには、

  • 別部署のメンバーに一度見てもらう
  • 顧客やユーザーに近い立場の人(営業・現場スタッフ)の意見を聞く
  • 外部の制作会社に「第三者の目」で評価してもらう

といったプロセスを、あらかじめ“ルール化”しておくことが効果的です。

ココがポイント!

「優秀な人」に一任するよりも、「別の目線が必ず入る仕組み」を作るほうが、炎上リスクは確実に下がります。

6すぐ使える“炎上回避チェックリスト”

ここまでの話を、実務で使いやすい形に落とし込んでみましょう。
リリース前・印刷前に、チームでサッと確認できる 7つのチェック項目 です。

炎上回避チェックリスト

こちらからダウンロード

    チェック項目リスト(7個)

  • 配色・図形が、特定の国旗・宗教・政治シンボルを強く連想させていないか?
  • 画像1枚だけ見たときに、誤った期待や不安を与えないか?
  • 「0円」「No.1」「日本初」などの強い表現に、十分な根拠と説明があるか?
  • 写真・イラストの品質は、サービスの価格帯・ブランドイメージと釣り合っているか?
  • センシティブとされる領域(医療・教育・災害など)を軽く扱っていないか?
  • リリース時期の社会情勢・ニュースと、表現がぶつかっていないか?
  • 社内の別部署、もしくは外部パートナーによる第三者チェックを行ったか?

OK/NGの基準

OKな状態
・説明文がなくても、誤読される可能性が比較的低い
・社内でチェックした際、「ここはやめておこう」という明確な懸念が出ていない
・もし質問されたとしても、「なぜこの表現なのか」を自信を持って説明できる

NG寄りの状態
・社内で「ちょっと危ない気もするが…まぁ大丈夫だろう」とモヤモヤしたまま進んでいる
・「なんとなく不安だけど、作り直しが大変なので見なかったことにする」空気がある
・パンフを見せたときに、数人が同じ違和感を指摘しているのに対応されていない


迷ったときは、どうすればいいか?

・思い切って表現を変える(色や写真を差し替える)
・「今回は使わない」という判断をする
・制作会社に相談し、「第三者の目+専門的な観点」で整理してもらう

特に制作会社は、他社事例を多く見ていますので、「どこまでなら許容されるか」の感覚があります。また言語化が難しい違和感を、見つけて別の提案をしてくれるでしょう。 デザインだけではなく、“判断のパートナー”としても相談してみるのをおすすめします。

ココがポイント!

チェックリストは「完璧な安全」を保証するものではありませんが、
「気づこうとする姿勢」がある組織であること自体が、リスクを大きく減らします。

7まとめ:「炎上リスクを下げるのは、“気づきと説明”の積み重ね」

ここまで見てきたとおり、炎上リスクを完全にゼロにすることは難しいかもしれません。
ただし「意図よりも連想が先に立つ時代である」という前提を理解しておくだけで、制作判断は大きく変わってきます。

特に、国旗、宗教、政治、災害表現 といった、感情を揺さぶりやすいモチーフは慎重に扱う必要があります。

また、「画像1枚でどう見えるか」、そして「今このタイミングで適切か」を意識するだけでも、誤解の芽はぐっと減らせるでしょう。
そして何より大切なのは、「なぜこの色なのか」「なぜこの構図なのか」「なぜこの写真なのか」を、社内で自分たちの言葉で丁寧に説明できる状態にしておくことです。

説明できるデザインは、多少の批判が起きても社内で守ることができ、社外に対しても誠実に理由を伝えられます。これは、長くブランドを育てるうえで大きな安心感につながります。


今回の炎上で「攻撃したり、嘲笑ったり」してしまっていませんか?

炎上が起きたとき、つい外野になって眺めてしまいがちです。
しかし、こうした出来事こそ「もし自分たちが同じ立場だったら?」と考える良い機会にもなります。
知識量や価値観に差があることは当たり前です。

    たとえば、

  • 若手は、歴史・文化の背景について上司や身近な大人に質問してみる
  • ベテラン層は、若い世代の価値観やSNSの感覚を共有してもらう
  • 「これってどう見える?」と、気軽に相談できる空気をつくる

こうした小さな対話の積み重ねが、価値観のズレを埋め、誤解や炎上を防ぐ大きな力になります。
世代や立場を超えた“学び合い”ができる組織は、デザインに強い組織でもあります。


最後に

私たちも、すべての業界・文化・背景に精通しているわけではありません。
ビジネスにおいて「誰にとっても完全にやさしい表現」を追求するのは、正直に言うと難しいです。
それでも、これまで多くのお客様から学び、さまざまな価値観に触れながら、表現のアップデートを重ねてきました。

今回の記事を読んで、
「うちのSNS運用、改めて見直してみようかな」
「社内で価値観を話し合う時間をつくってみようかな」
と感じていただけたなら、とても嬉しく思います。
これからも、“より安全で、より伝わるデザイン”についてブログでお伝えできたらと思います。

後藤ようこ

執筆者:石川浩子

石川 浩子チーフデザイナー

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