

執筆者:後藤ようこ
ユニバーサルデザイン2025年参議院選挙から学ぶ!ー「伝わるデザイン」のチカラ — ユニバーサルデザインで広がる情報格差の解消
- 2025年07月09日
- コラム

執筆者:後藤ようこ
後藤 ようこ取締役副社長
スキル
- ランディング(執筆)
- ディレクション
- コンサルティング
大学病院で看護師として働いたのち、看護教員の資格を取得し看護教育に携わりました。
現在は株式会社ノーブランドの取締役としてウェブサイトやパンフレット制作のディレクションを担当しています。(ディレクションは20年以上の経験を持ちます。)
また、医療系の出版社で医療記事の連載をした経験があります。医療記事をはじめ、販促物に掲載する原稿作成(ライティング)も担当しています。医療知識を持っているため、医療、介護、福祉関係のお客様が多いです
これまで学んできた、教育学、人間関係論、心理学などの知識を活かし、販売促進に関わるコンサルティングも行っています。
<記事の概要>
2025年参院選で各政党が用意したパンフレットやポスターを分析。視認性や配色など、ユニバーサルデザイン(UD)の視点から読み解きます。日頃の販促物づくりにも役立つヒントがきっと見つかるはずです。目 次
1「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」と参院選
2025年参議院選挙では、各政党が発表するマニフェストが、単なる政策文書にとどまらず、“見せ方”にも工夫が凝らされています。今回はその中でも、「ユニバーサルデザイン(UD)」の観点から注目すべきポイントを紹介していきたいと思います。
特に重要なのが、カラーユニバーサルデザイン(CUD)の考え方です。
つまり、「色で伝える」情報は、一部の人に伝わっていない可能性があるのです。
CUDに配慮するということは、“特別な人のための配慮”ではなく、すべての人にとって見やすく、わかりやすいデザインにもつながります。情報を効率よく伝達し、見た目を美しくするためにも、CUDの概念を理解し、色を上手に使うことが求められます。
2CUDに配慮したデザインのポイント
CUDに配慮したデザインのポイントは沢山ありますが、重要なポイントを以下にいくつかご紹介します。
情報を伝えるときは、形・模様・アイコン・位置・太さなども併用すること。
グラフにおいては色分けだけでなく、破線や模様の違いを組み合わせる。
背景と文字の明度差をはっきりと。
基本は「白地に黒文字」。これがもっとも読みやすい組み合わせです。
赤×緑は色覚特性のある方には非常に見えにくい。
暗い赤は黒と区別しにくい。朱色やオレンジ寄りに変更すること。
青や紺は高齢者には認識しにくいことがある。
小さい文字や細い線に淡い色(黄色・水色など)はNG。
できるだけ大きく・太く・シンプルなフォントで。
白黒印刷でも情報が判別できるかどうかを確認することで、色に頼らない情報設計ができているかどうかが分かる。
3UDの基本
ユニバーサルデザインについては、過去のブログ記事で特集しています。
詳しくはこちらのブログをご参照ください。
42025年参議院選挙マニフェストから学ぶ!各政党のUDへの工夫
今回の参議院選挙で各政党が公開したマニフェスト(WEBで公開されているPDFなど)は、まさにユニバーサルデザインの具体的な実践例として学ぶべき点が数多くありました。
その視覚デザインに焦点を当てて見ていきましょう。
公式サイトから拝借しておりますが、マニュフェストがWEB、テキスト、PDFと多岐にわたっているため、すべての情報を拾いきれていない可能性もございます。また抜粋した政党のみ扱っていることをご容赦ください。弊社と政治団体との関係は一切ございません。
各政党の政策や政治思想については関係なく、あくまでも視覚デザインのみについてまとめます。
5自由民主党:党カラーを基調とした力強いデザイン
➡自由民主党ホームページ
自由民主党の党カラーは赤と白。
この党カラーを基調とし、白地に赤い見出しや太字ゴシック体の赤い大見出しを配置しています。白地と赤の見出しはコントラストが明確で、視認性を高める可能性があります。
ただし、黒文字の中の赤文字の組み合わせは色覚特性のP型・D型にはコントラストが弱いので、文中に色文字を入れる場合は、枠で囲ったりする工夫があるとより良いように思いました。
また図解が、少し足りない印象があったので、もっとインフォグラフィックスを取り入れたら、もっと魅力が伝わるように感じました。
役立つメモ
6立憲民主党:青の落ち着いたカラーリング
➡立憲民主党のホームページ
立憲民主党は青を主体としたクリーンなデザイン。
白い背景に黒字の本文が特徴的でした。
白背景に黒文字は、最もコントラストが高く、UDの観点から非常に読みやすい配色と言えます。
テキスト中心のレイアウトも視覚情報が複雑になることを避け、理解を助けます。
ページ数が多いので目次などナビゲートがあると親切だなと感じました。
7日本維新の会:インフォグラフィックが魅力的
➡日本維新の会のホームページ
日本維新の会はライトグリーンを基調に、緑背景に白抜き文字のスローガンや見出しを大書しています。
白抜き文字はコントラストが強ければ有効ですが、ライトグリーンと白の組み合わせは、色覚特性を持つ人にとって、若干見分けにくい場合があります。
ただ、全体的にインフォグラフィックスやアイコン付き箇条書き、図表を多用しているため、色以外の視覚情報(形やパターン)で政策を表現している点でUDに配慮していると思いました。
役立つメモ
ライトグリーンと白の組み合わせは、色覚特性を持つ人にとって見分けにくい場合があります。
8公明党:冊子としてよみやすい
➡公明党のホームページ
公明党は、特にテキスト中心の資料にありがちな“情報の密集感”がなく、多くの写真とレイアウトと文字設計で冊子として読みやすいのが特徴です。
改善点を挙げるならば、図やアイコンの視覚的な補助があると良いように思いました。
9日本共産党:文字量が多いが落ち着いた紙面デザイン
➡日本共産党のホームページ
文章量が多く、細かな政策を段組みで掲載しています。
落ち着いた紙面デザインで、文庫本のようなレイアウト。
強調枠や色以外の工夫(例えば目次作成)が施されていれば、さらに読み進めやすさが向上すると感じました。
10国民民主党:漫画風のイラストやアイコンがUDの原則に合致
➡国民民主党のホームページ
国民民主党は党カラーのオレンジと紺色をアクセントに、図解や写真を織り交ぜたポップなデザインになっています。
漫画風のイラストやアイコンを用いて政策を親しみやすく表現している点が特徴です。
これは色以外の手段で情報を補完するUDの原則に合致しています。
見出しごとのカラータブは、色覚特性によっては判別が難しい可能性もありますが、全体的なデザイン装飾で読み進めやすさは高いと感じました。
11れいわ新選組:大きな文字で端的にレイアウトされていていい
➡れいわ新選組のホームページ
れいわ新選組は、黒地に白文字のキャッチコピーや太字タイトルが印象的で、大胆なレイアウトで公約キーワードを大書しています。
大きな文字で端的にレイアウト構成されているので、どんな方にも読みやすく全体的に視認性に優れています。
強いていうと、ピンクと黒文字の組み合わせは、色覚特性のP型・D型にはコントラストが弱いので、文中に色文字を入れる場合は、枠で囲ったりする工夫があると良いかもしれません。
12社会民主党:可読性に配慮されている
➡社会民主党のホームページ
社会民主党は、表紙では腕に重なった文字に縁(フチ)をつけていて可読性に配慮しています。
本文の書体が少し細いので、見出しと本文で強弱をつけたら、より見やすいのでは無いかと感じました。
13NHK党:水色と黄色の配色はコントラスト
➡NHK党のホームページ
NHK党は、水色と黄色の配色はコントラストが強く目を惹きます。
ウェブサイトは非常にシンプルなレイアウトで、白背景に黒文字中心で構成されています。タイトル見出しと本文で強弱をつけるとよりよいかもしれませんね。
14参政党:オレンジ背景色に黒い文字はコントラストが強く目を惹く
➡参政党のホームページ
参政党の公式ウェブページで政策を公開しており、オレンジ背景色に黒い文字はコントラストが強く目を惹きます。改善点を挙げるならば、図やアイコンの視覚的な補助があると、もっと読みやすくなるでしょう。
15チームみらい: 利用者のニーズに応じて調整可能。UDに優れている
➡チームみらいのホームページ
チームみらいのマニフェストはオンライン上で公開されており、スライド形式の「要約版」と文章形式の「詳細版」が用意されています。
ウェブサイトはクリーンなデザインで、テクノロジーによる政治の透明化、効率化、スマート化を掲げています。デジタル形式であるため、ユーザー側での文字サイズ調整や色補正など、利用者のニーズに応じた表示調整の可能性を秘めている点でUDに優れていると言えます。
太字の見出しや箇条書きで、情報が整理されており視認性も高められています.
16無所属連合
➡無所属連合のホームページ
無所属連合のウェブサイトは非常に簡素なレイアウトで、白背景に黒文字中心で構成されています。赤と青のグラデーションは立体感を感じられます。
図やアイコンの視覚的な補助があると、もっとよいかもしれません。
17白黒基調で視認性高くしている政党が多い
自民党や公明党、NHK党、立憲民主党、そしてれいわ新選組、無所属連合のように、白黒基調や白背景に黒文字を主体としたマニフェストが多く見られました。
これは、最もコントラストが高く、UDの観点から非常に読みやすい配色であり、誰もが情報にアクセスしやすいという点で高く評価できます。
シンプルながらも、情報の正確な伝達に優れていると言えるでしょう。
18テーマカラーの統一 (公式サイトやマニュフェストから)
各政党によってテーマカラーは明確に異なっており、それぞれのブランドイメージやメッセージ性を色に込めています。
どの政党も、ユニバーサルデザイン(UD)の視点から見ても、しっかりとしたコントラストが保たれており、視認性の高いデザインになっているのが特徴です。
また一見コントラストがないように見える配色でもフチをつけたり、色味調整をすることで色覚特性の方にもよみやすくなります。
他:
公明党(青〜多色)
日本共産党(濃ピンク・ピンク・青)
国民民主党(濃黄色〜多色)
社民党(青〜多色)
無所属連合(赤〜青)
19色以外の要素で情報を補完する工夫している政党は
日本維新の会や国民民主党、立憲民主党、れいわ新選組は、インフォグラフィックス、アイコン、図解、吹き出しなどを積極的に活用していました。
これは、色だけで情報を伝えるのではなく、形やパターンといった色以外の要素で情報を補完するというUDの原則に合致しています。さらに国民民主党のキャラクター風イラストやアイコンは、政策を親しみやすく表現し、多くの層にアプローチしようとする意図が見えました。
20デジタル媒体の利点を活用している
チームみらいのように、オンライン上でマニフェストを公開し、スライド形式の「要約版」と文章形式の「詳細版」を用意している政党もありました。
また詳細版では、AIとチャットしながら質疑応答ができます。
小学生にもわかるようにも原稿を要約でき、現代のテクノロジーを最大限に使った、どんな人にも優しいデジタル媒体を目指した未来と言えるでしょう。
21デザインという視点で各政党のポスター、WEBサイトやマニュフェストを見てみよう
今回の選挙マニフェストの事例から、私たちは「見栄えのいい配色と全てのユーザーが使いやすい配色は異なる」という重要な示唆を得ることができます。
私たちはとかく、デザインを「おしゃれにする」「格好良く見せる」ことに意識が向きがちですが、本当に大切なのは、「誰に、何を、どう伝えたいか」という目的が、デザインによって最大限に達成されているかという点です。
選挙は全国民がターゲットです。
したがって各政党とも文字や色を駆使してデザインに力を入れるのは至極当然です。
格好の学びのチャンスでもあります。
もし今、あなたが自社の販促物で幅広いターゲット層を集客したい場合、ぜひユニバーサルデザインの視点を持つことを強くお勧めします。
これらの問いかけに、根拠を持って「はい」と答えられるパンフレットや資料を制作することができれば、それは単なる販促物を超え、あなたの会社の信頼性を高め、より多くの顧客にリーチし、ひいては売上向上に直結する強力な武器となるでしょう。
私たちは、単に「デザインが美しい」だけでなく、「誰もが理解しやすい」「本当に伝わる」デザインの重要性を深く理解しています。パンフレット制作や自社資料作成において、ユニバーサルデザインの視点を取り入れたいとお考えでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。