

執筆者:後藤ようこ
営業マンの時間ロス
- 2013年11月22日
- コラム
「最近いかがですか?」
中堅どころの営業マンが新人営業マンと一緒に、顧客の所に訪問する、という、古今東西、繰り返される営業スタイル。今も健在で、変わらず繰り返されています。
「営業」という仕事=(イコール)顧客周り、みたいな風潮も根強く、なんとなく昭和の香りがしてきます。
いえいえ。
これを否定しているわけではありません。そうではなく、今回はこの記事で、改めてこの仕組を分析してみたいのです。そして、どのように顧客訪問をすべきか、徹底的に考えてみたい、という事です。ぜひ、ご興味のある方は最後まで読んでいただければと思います。
各企業の営業部門では、新規顧客の開拓からリピーターの囲い込みまで、あらゆる営業戦略の元、日々オフェンシブな営業活動をしています。それぞれの企業によって、営業マンが何名いるかはまちまちですが、特に、中小企業にとっては、限られた人材で一生懸命、顧客獲得に取り組んでいるのはどこも変わりないことでしょう。
ここで押さえておきたいのは、「時間も」「人材も」=有限である。という点です。
『限られた時間内に限られた人材で、効率よく優良顧客を獲得すること。』営業部隊の目標は、これ以上でもこれ以下でもないはずなのです。しかし、ついつい忘れがちになることがあります。仕事欲しさに、『いつでもどこでも駆けつけます!』というアクションです。
これは、ある意味正解でもあり不正解でもあると思います。(※これが売りで商売しているサービスは除く)
もちろん、仕事も営業成績も順調で、暇で暇でしょうがない….。でも仕事はパンパン….。儲かってて儲かってて….。というのであれば、完全に喜ばしいことなので「最近いかがですか?」戦法に異論はありません。でも、そうでない場合は、ちょっと一度考える必要があると感じます。
まず、人が動くと何が起こるでしょうか?
注目すべき一つ目は、「移動」です。
顧客から顧客への移動は、平均どれくらいかかっているでしょうか?その間、営業マンは何ができるでしょうか?もちろん、3軒先の顧客への移動なら、歩いて2~3分で済むでしょうね。しかし、電車、車、いずれも、ドア to ドアで考えると、とても時間をロスしています。もちろん、これをロスとするかどうか?は微妙でしょうが、この時間に何ができるか?と考えるとロスと言わざるを得ないと感じます。
そして、顧客の所で小一時間、商談した後、また、帰路につきます。
この間は、なんでしょう?報告書か何かを電車内でまとめるのでしょうか?Facebookとかtwitterで気分転換もしますよね。(私はします。笑)いずれにせよ、この状態では落ち着いた資料の作成や企画書の作成は難しいでしょう。そんな事をするより、世の中の人がどんな事に興味を持っているか?人間ウォッチングしている方が有意義なネタが集まるはずです。
さらに、帰社せずに、2~3件の顧客を渡り歩く事もあるでしょう。
でも、私も経験ありますが、2件・3件となると、頭脳疲労もピークを超え、顧客に良い提案ができる余力も無くなっていくのが現状です。かといって、別の日に1件ずつ、となると、この移動ロスを加算すると、雪だるま式に大きくなっていく事もお分かりかと思います。
つまり、「移動」というのは、その瞬間は数時間の問題ですが積み重なると大きな時間になっていくということです。この時間を、デスクワークやMTG、考える時間に回せたら何か変わるのでは無いかと考えます。
実は当社では、訪問による商談は別費用としています。「何?仕事もらいにいくのにお金をとるのか?」と言われるかもしれません。そうではないのです。
商談する前に、ある程度勝負を決めておくのです。事前にお送りする資料を十分煮詰める。事前にご説明するトークを十分練る。いくらでも考え、創意工夫する余地があるはずです。訪問前にやれる事をとことん突き詰めるのです。
その結果、商談はご注文前提で行います。通常のご注文になった時には、その分は元々サービス料金(見積もり)に含まれているものですから、余計に支払う訳ではないのです。
例えば、20万円のご注文金額のうち、1万円分がお打ち合わせ費用だとします。最初から20万円の仕事なのですから、顧客も納得します。でも、ここでポイントなのは、顧客側が「訪問はいらないよ」と言ってくださったらこの1万円分は値引く事が出来るというわけです。それは、顧客にとってみれば、値引きにあたるものでちょっとでもコストカットしたいお客様にとっては非常に喜ばれるというわけです。
なので、この説明をすると、多くの顧客が「じゃあ、訪問はいいや。メールと電話で十分だし」とおっしゃいます。そして、お値引きさせていただきます。こうして、移動のロスを削った結果、デスクワークで、より顧客にとって有益な企画を立てる時間を捻出でき、脳みそもスッキリ効率よく動かせ、さらなる顧客サービスに反映できるのです。ここで、もう一つのポイントがありますね。上記に述べたのは新規顧客への働きかけであり、リピーターには、通用しないだろ、ということです。
そんなことはありません。
そもそも、リピーターさんには、営業マンの不定期な訪問よりも定期的なアプローチを継続していった方が顧客のためになると思います。定期的にメールマガジンを発行するとか、定期刊行物を郵送し続けるとか。営業マンではなくとも、有益な情報発信を継続して行なっているが、ずっとずっと顧客のためになります。それで、興味をもっていただいた顧客の所に訪問すれば良くて、そうなれば前述した手法も有効になるわけです。
時代はどんどん変わっています。
ネットを使った情報発信もしかり、無料のテレビ電話やチャットもしかり、対面でなくとも顧客とコミュニケーション出来るインフラが沢山出回っています。これらを有効活用することや、動かずに顧客の心を動かす努力をし続けなければならない時代だと思います。
ただ、対面でなければ伝わりにくい場合も往々にしてあります。その時は、迷わず顧客の所に駆けつけます。しかし、その時も、わざわざ移動時間をかけて行っているわけですから、より、有益な商談にする必要がありますね。その時の事前準備もしっかり行うといいと思います。
そうです。
ロス時間をカットできた分を、その準備に使うのです。とても有益だと思いませんか?
すべての企業に効果的だとは思いませんが、一つの参考資料として読んでいただければ幸いです。