

執筆者:後藤ようこ
日常にひそむ怖さ
- 2016年04月25日
- コラム
先日、ある犯罪ドキュメンタリー本を読みました。
その本には、犯罪者が被害者を追い込み、最終的に殺害してしまう経緯が書かれており、犯人への憎しみが募りました。
ところが、読み進めていくと、捜査にあたった警察官や警察組織の対応の酷さに犯人以上の怒りがこみ上げてきました。
その理由は、被害者や遺族に対して行った行動や、言葉です。
警察官は聖人とまでは思いませんが、人一倍正義感が強い人がなっているはずです。
その人達がどうして被害者や遺族の心を踏みにじるようなひどい言動が出来てしまうのか?
「なぜだろう?」と考えてみました。
私なりの考えは、「日常」がそうさせているのではないか、ということです。
被害者や遺族からすれば、自分や身内が犯罪に巻き込まれることは、日常的なことではありません。しかし、日々犯罪を取り扱っている警察からすれば、ありふれた日常にすぎないのではないでしょうか。日常として慣れてしまうことで、物事を簡単にとらえ、流れ作業のように右から左に処理してしまう。そこには相手の立場や視点が失われてしまう。
とても怖いことですが、悪気はなくても相手を傷つけたり、失望させたりしてしまう。
でも、これって私たちにも当てはまりませんか?
例えば弊社の場合だと、お客様からお金をいただきパンフレットやWebサイトを作っています。毎日行っている日常の業務です。
「まーこの案件は予算が◯◯円だから、あまりこだわった制作はできないな。この程度の作業でいいだろ・・・」。もちろん予算に対して十分な作業は行なっています。しかし、そこに相手の思いや視点は含まれているのかということです。
たとえ少なめの予算であっても、その予算を捻出するためにどれほどの苦労があって用意したのか・・・。なんとか売上に貢献して欲しいとの強い願いを持ち、数ある制作会社の中から、弊社を選んでくれたのではないのか・・・など。
確かにお客様はお金を払って弊社に商品を注文しています。そして弊社もお金に見合うだけの商品は売っています。
しかし、単純なお金と商品のやり取りだけでは高い満足度を与えることはできません。
日常の中で消えてしまう相手の思いや視点。
もちろん予算分の仕事はきっちりとこなしていますので、面と向かったクレームにはなりません。しかし、目に見えない、形に現れない「何か」となってお客様の心に残ってしまうかもしれません。
結果として、「ノーブランドは悪くはないけど、もっといい制作会社はないかな・・・」と、次回には他社に乗り換えてしまうかもしれません。これまでもお客様の思いは考慮していましたが、さらなる意識が必要と感じました。予算を無視し、過剰にサービスをするということではなく、常にお客様の思いや気持ちを頭に置き、日常の業務に取り組むことがとても重要だと改めて思いました。
そのことが、何気ない立ち振舞や言葉遣いにつながり、業務の品質向上、さらにお客様との深い信頼関係につながっていくのかもしれません。