

執筆者:nobrand
買い手の価値観にあった魅力を見つける【Vol.1】
- 2013年07月11日
- コラム
「他社よりも優れているので、もっと売れるはず」の間違い。
自社の商品やサービスを「お客視点で定義」することは、販売していく上でとても重要です。
では、「お客視点で定義」とは何でしょう?
それは、お客(買い手)の価値観に合わせた商品やサービスの魅力のことです。
売り手(販売者・製造者・提供者)は、当然自社の商品やサービスに自信があるから販売をしているはずです。
「他社に比べて性能が良い」「他社よりも安い」など、他社と比較しても充分勝算があると考えているからこそ販売している訳です。
ところが、この売り手の定義が曖昧だったり、買い手にとっての価値観とずれていたりするケースが多くあります。
または、凄く魅力的な定義があるにもかかわらず、そのことが売り手の社長の頭の中にだけある場合もあります。(このケースに関しては、次の機会にお話しします。)
具体的なケースでお話ししましょう。
私の会社のお客様に、住宅用の建築資材を製造販売している会社があります。
その会社では、住宅の室内にあるホルムアルデヒドやタバコに含まれる有害物質などを吸着する壁材を販売していました。その会社の社長さんは、自社の商品に絶対的な自信を持っており、他社の同様の商品には負けないと豪語していました。
しかし、残念なことに市場でのシェアは1位に圧倒的な差を付けられ2位に甘んじていました。
「うちの商品の方が、1位の会社の商品よりも優れているのだから、もっともっと売れても良いはず」と社長さんは話してくれました。
確かに社長さんの主張は間違っていません。
他社よりも優れていれば、もっと売れるはずです。
「社長、では他社の商品に対して、何が優れているのですか?」と私は質問をしてみました。
すると、社長さんは、待ってましたとばかりに細かな数字がびっしりと書かれた書類を持ち出してきました。
その書類は、信用のおける検査機関で、自社と他社の商品の性能検査をしてもらった際の、分析書でした。
「ほらここ、この数字を比べて見てよ。うちの商品の方が、3ppm優れているんだよ!」
興奮気味に話をする社長さんとは裏腹に、私の心は沈んでいきました。
この3ppmというのは、有害物質を吸着する能力のことです。当然、吸着能力が高い方が商品として優れています。しかし、3ppmの差は買い手から見た場合、あまりにも小さな魅力だったのです。
そうです、私は社長さんの話を聞いて、売り手と買い手の商品に対する魅力のギャップを見つけたのです。
販売する商品やサービスが、他社よりも優れていることはとても重要です。
しかし、その魅力が買い手にとっての魅力でなければ意味がないのです。
この社長さんのケースは、決して特殊なケースではありません。
特に製造業の方には多く見られるケースです。作り手の気持ちとして「より高性能な物を作りたい」という思いが強いからです。
この高性能が、買い手にとっての魅力につながっていれば良いのですが、この商品の場合には、住宅用壁材ですので、健康に対しての意識の高い主婦が積極的に求める商品です。
主婦にとっては3ppmの差といっても、その違いが自分にとってどれだけ良いことかピンとはこないのです。
それに対し、シェア1位の会社は、性能で劣るぶん、細かな検査結果の数字などアピールしません。わざわざ自社にとって不利な土俵では戦いません。その代わり「簡単・導入し易い・安い」をうたい文句にしているのです。
買い手は商品やサービスに対して、魅力を感じなければ買いません。
この「3ppmの差」と「簡単・導入し易い・安い」の違い、主婦はどちらの商品に魅力を感じたのかが、そのままシェア獲得の大きな開きとなって現れているのです。
つまり、買い手が求めている魅力を、売り手が定義してアピールできるかが商品やサービスの売上を決めるのです。