

執筆者:後藤ようこ
デザインを笑うな
- 2016年11月17日
- コラム
当社では、継続した営業の成果もあり毎月コンスタンスに新規取引先が増えています。既存の取引先(リピーター)様からのご注文にも支えられながら、右上がりに新規顧客が増えていくのはありがたいことです。
特に、当社に問い合わせをしてくださる新規顧客様の特徴として、『はじめてパンフレット(カタログ)を作るのですが』というビギナーさんからのお問い合わせが多い事があげられます。そんな方々には、制作のノウハウを丁寧にご説明することから始めます。
そんな中、以前、お打合せさせていただいたお客様がこんな事をおっしゃっていたことを思い出しました。
今使っているパンフレットの内容とデザインが気に入らなくて、“営業マンが恥ずかしくて使いたくない”というお悩みを抱えていらっしゃる方でした。現在使っているパンフレットを拝見すると、たしかに色々問題がある内容ではあったので『なるほど….』とあいづちをうちながら、詳しいお話をお聞きした次第です。
そんな会話の中でお客様がこんなことをおっしゃいました。
『このデザインをある制作会社さんに見せたら、笑われたんですよ。笑われてしまうパンフレットなんて…』
と笑いながらおっしゃったのです。
たしかに、実物をみてみると、(本音で言えば)現場でお使いになっている営業マンさんはテンションが上がらない理由もわからなくもありません。ただ、その別の制作会社さんが『笑った』という行動には、微妙に賛同できませんでした。(そこ?笑)
この話をされたお客様に賛同できなかったのではなく、知らないデザイナーがパンフレットを作った過程を何も知らずに、なんとなく顧客の前で笑うというのは、ちょっとデリカシーにかけるなと思ったわけです。仕事を得るための行為であれば尚さらです。
そのほとんどが、オリジナルデザインである商用のパンフレットやカタログの出来上がりは、デザイナーやディレクターのセンスやデザインに対する考え方がそのまま如実に出てしまいます。デザインとは主観的なものですので、他方が良いと思っても、片方は好きじゃないと思うかもしれません。
ただ、その好みやスキルの差はあれど、それぞれのクリエイターが一生懸命作った作品を、何も知らない人が笑ってしまうというのは、いささかプロとして品位に欠けるのでは?と感じてしまいます。
もちろん、これが仕事には関係の無い話として茶飲み話やSNS上でのネタみたいなものなら、カジュアルな話としてスルーできます。利益に関係の無いスタンスでの感想程度の話であれば気分が悪くなることもないでしょう。しかし、仕事の話の延長線上での振る舞いであれば、ちょっと共感できないなと感じました。
当社では、絶対に他社のサービスや商品、クリエイティブを否定したりして仕事を得るようなセールストークはしないようにしています。
もしも、他社が作ったデザインの論評を求められた場合でも、「こういう部分は良いが、こういう部分は、こういう理由であまり良くないのでこうした方がよい。』というアドバイスをします。同じクリエイティブに携わるものとして、制作の苦労やジレンマというものは十分理解できるからです。同じ土俵の上に立った状態で、相手をけなすのではなく、自社の強みや良さをPRすることで認めてもらいたいと思います。
ビジネスというものは、こんな人間らしい感情のコントロールの元に、極めて王道の成功法で取り組みたい主義かもしれません。