

執筆者:後藤ようこ
『会社の理念』をどのように落とし込むか
- 2017年08月11日
- コラム
- 経営
先日、あるクライアントと『会社の理念』への向き合い方についてお話をいたしました。
その時のディスカッションを踏まえ、『会社の理念』を、どのようにスタッフの隅々まで行き渡らせるかについてコラムにまとめてみたいと思います。
難しすぎる『会社理念』
先日お伺いした某クライアントは、医療機関のご経営者さんでした。
『今、悩んでいる事の相談に乗って欲しい』と言われたので、しばしお悩みをお聞きすることに。
お悩みというのは『会社の理念をいかにスタッフに分かりやすく伝えればいいのか?』という事でした。
経営者が掲げる『会社の理念』とは、会社全体の思想の骨格です。
ここがブレたりすると、やはりスタッフは混乱しますし、何よりもより良い顧客サービスを実現できません。
しかし、経営者というのは、時にその思いが熱すぎる事があるのです。
熱い熱い想いを『会社の理念』に盛り込んでしまうため、その明文化された文字表現がスタッフに伝わりづらくなる。このジレンマに陥っているご経営者(および管理責任者)さんも多いのではないでしょうか?
しかし、だからといって平素で簡易な表現にもできない。
これが、経営者とスタッフの間の見えない壁なのです。
経営者が考えぬいた『会社理念』を変えるのではなく活かす
今回の具体的な相談とは、この『会社の理念』をもっと分かりやすく変えたほうがいいのか?という質問でしたが、私は、このお悩みの趣旨はそこではないのでは無いかと考えました。
つまり、『会社の理念』を噛み砕いたり、安易に複数ある会社の指針をまとめたりするのは好ましくありません。『会社の理念』とは経営者の思想そのものです。いろんな想いを経て、ここに至っている訳ですから、安易に変える必要は無いと思いました。
では、今悶々としている、このご経営者様とスタッフの温度差をどう埋めるのか?
私は、こんな感じに話を導きました。
『今足りないのは、難しく感じる“会社の理念”を分かりやすく変えるということではなく、今まさに、現場で起こっている仕事の細かな部分が、会社の指針と照らして、どのような意味があるのか?という事を噛み砕いて、みんながディスカッションできればいいのではないか?』
この意図は、具体的に言えばこういうことです。
例えば、ちょっとした顧客からのクレームがあった時、ちょっとした仕事中のミスがあったとき、その時とった行動は、会社の理念にモノサシをあてて考えたら、どうであったのか?もっと適切な対応や言葉掛けは無かったのか?ということを、みんなでディスカッションすればいいと思うのです。(当社ではいつもやっています)
現場で実際に起こったことが題材になれば、難しく感じた会社の理念が、ものすごくリアリティをもって身近に感じる事でしょう。
逆に、リアリティの無い思想は、誰の心にも響かないものです。理念や思想というものは、具体的な行動に落とこんでこそ、生き生きと輝き始めるのです。
ここまで説明したら、クライアントはストンと腑に落ちたようで、スッキリされたようでした。
解決策を具体的に提示したわけではありませんが、私とのMTGで手がかりが生まれた事に、とても喜びを感じた次第です。
会社の理念とは、会社の屋台骨です。
スタッフの思想の隅々まで、そして仕事や言葉の一つひとつまで行き渡るような、会社経営を理想としたいものです。